止むなく始めた在宅勤務、社員は「集中できる」「効率が上がった」というけれど…
【背景】コロナ禍で受託業務が激減
戦前より印刷業を営み80年。数多くのクライアント直接の発注が売上を支えていました。2020年4月新型コロナウィルス蔓延を発端とした緊急事態宣言、不要・ 不急の外出自粛はこの企業にも大きな打撃を与えました。 広告会社も含めた発注数が激減したのです。進行中だった案件の中には途中で取りやめになったものまでありました。
印刷物を作成するには、クライアントとの要望すりあわせやデザインチェックなど対面で行う事が多々あります。 コロナ禍で求められる非対面での商談や発注案件の制作進行はとても困難を極めています。
その中でも社員を守り、会社を維持して行くには在宅でも生産性を下げないまさに「働き方改革」でした。
<企業>
業種:印刷業 従業員数:50名前後
情報システム部門:兼務かつ一人情シス
【課題】在宅勤務時の勤務状況を把握したい
緊急事態宣言を受け、経営・幹部を除く社員には在宅勤務をさせることになったD社。 印刷業はクライアントの機密情報を取り扱うこともあれば、カタログの制作データなど非常に容量のあるファイルを取り扱うことも多くあります。 まずは機密情報を漏えいさせない仕組みが必要でした。とはいえすぐにVPNを構築するといった費用を掛けることは難しく、不安が残る中では ありましたがクラウドサービスを活用しクライアントとのファイルのやりとりをする事を決めました。
また、デザイナー部の多くはデスクトップを利用していたため自宅で業務するための会社支給PCとして ある程度のスペックを備えたノートパソコンが必要だったのです。 ただ、これが非常に困難でした。当初すぐに支給できると考えていたノートパソコンでしたが付き合いの ある業者に連絡をしても在庫がないという状況が続きます。仕方なく取り急ぎは社員が自宅で使っているパソコンでの業務を認めざるを得ませんでした。
在宅勤務時のルールとして、グループウェアでの出退勤報告と上長へのメールでの日報提出を義務づけました。 残業に関しても事前報告があれば了承するとして3ヶ月に渡る在宅勤務がスタートしました。
問題はすぐに顕在化します。残業時間が通常時より1.5倍ほどになったのです。 商談がなくなり、進行中の案件も中止になるなど売上減は火を見るより明らか。それなのに出費が増える事がわかったのです。 「社員は信じたい」が、本当に勤務時間分の業務を行っているのか。出社している時より生産性が落ちてはいないのか。 様々な疑念が社長を襲います。とうとう日報を社長が全てチェックするという事態になりました。
<課題>
- 勤務状況を把握したい
- 出勤時PCは起動しているのか
- 働いていない時間(PCが動いていない)は、あるのか
- 勤務時間中、どのような作業をしているのか
【解決】PC稼働ログを中心としたPCの操作ログを取得し、勤務実態を把握
きっかけは、社員自身のPCからレンタルPCに変更した事でした。 業者からPCの用意ができたと連絡があり、その時に勤怠管理の一つとして操作ログを取得してはどうかと提案があったのです。 提案されたツールはクラウド型のため在宅勤務であってもインターネットに繋がっていればPC操作のログを取得する事ができるものでした。 操作ログも、PCの稼動状況を把握する、ファイルアクセスやファイル操作がわかり、クラウドサービスへのアクセスも把握することができました。
社長は早速トライアルを決めます。レンタルPCだったのでキッティングを業者に依頼しその際にログが取れる仕組みもインストールしてもらうことにしました。 出退勤とPC稼動ログを付け合わせする勤務中は無作為に電源状態をチェックし、長時間スリープしているような場合はアラートを飛ばす 残業時間は、ファイル操作ログを確認するといった、勤務態度チェックを1ヶ月間してみることにしました。 さて、実態はどうだったのでしょうか・・・社長の疑念が懸念であったことを祈るばかりですが、 ヒントはこの操作ログの仕組みを導入し今は自動でチェックをしています。
解決後の効果
勤務時間中の無駄がなくなり生産性が向上したと思っている (同社 社長) | |
ムダだと思っていた日報の提出が不要になった (同社 営業部 男性社員) |
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長時間勤務の社員をケアできるようになり、社員満足度の向上に寄与している (同社 人事部マネージャー) |