初回公開日:2025年12月23日
ランサムウェア対策は、企業の情報セキュリティにおいて最優先で取り組むべき課題の一つです。
近年では、大企業だけでなく中小企業も標的となり、業務停止や情報漏えいなど深刻な被害につながるケースが増えています。実際に、国内でもランサムウェアによる被害は継続的に報告されており、企業規模を問わず対策の重要性が高まっています。
しかし、「具体的にどのような対策を行えばよいのか分からない」「自社の対策が十分か不安」と感じている担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、ランサムウェアの基本的な仕組みから、企業が実施すべき具体的な対策までを分かりやすく解説します。

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1:ランサムウェアとは?仕組みと企業リスクを解説
ランサムウェア対策を適切に行うためには、まずその仕組みや攻撃手法を正しく理解することが重要です。どのように侵入し、どのような被害をもたらすのかを把握することで、実効性のある対策につながります。本章では、ランサムウェアの基本的な仕組みと企業リスクについて解説します。
ランサムウェアの正体は「身代金要求型マルウェア」
ランサムウェア(Ransomware)は、「Ransom(身代金)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせた造語です。日本語では「身代金要求型マルウェア」と呼ばれており、その名前の通り、金銭の要求を目的として作られています。
ランサムウェアが従来のコンピューターウイルスと決定的に違う点は、単にシステムを破壊したり、情報を盗み見たりするだけでなく、データを人質に取るという攻撃手法を用いる点です。
攻撃手法は「データの暗号化」と「二重の脅し」
ランサムウェアの攻撃は、以下の流れで進行し、企業に深刻なダメージを与えます。
- 侵入と潜伏: VPNの脆弱性、不審なメールの開封、リモートデスクトップの認証情報の悪用など、さまざまな経路で企業ネットワークへ侵入します。
- 実行(暗号化):侵入に成功すると、ランサムウェアが実行され、ファイルやシステムを勝手に「強力な暗号」でロックしてしまいます。これにより、システムが停止し、業務が麻痺します。
- 身代金の要求: 暗号化が完了すると、ファイルを元に戻すための「復号鍵」と引き換えに、身代金(多くは仮想通貨)の支払いを要求するメッセージ(ランサムノート)が表示されます。
かつては「暗号化」が主でしたが、現代のランサムウェアはさらに巧妙化し、データを盗み出すことを組み合わせた「二重脅迫(ダブル・エクストーション)」が主流となっています。ランサムウェアは、大切なファイルや顧客情報を人質に取り、「業務を再開したいなら金を払え」と脅しをかけてくる、非常に悪質なサイバー犯罪なのです。
なお、ランサムウェアはメールの添付ファイルや不正サイトの閲覧、VPN機器の脆弱性など、さまざまな経路から侵入します。感染経路について詳しく知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
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2:ランサムウェアの被害現状と対策の重要性
ランサムウェアの脅威は、報道されている以上に、多くの企業にとって現実のものとなっています。ここでは、警察庁が公表しているデータに基づき、現在の被害状況と、なぜ今、対策の強化が急務なのかを解説します。
ランサムウェア被害は高止まり、その手口はより巧妙に
警察庁が公表している情報からも、ランサムウェアによる被害件数は、依然として高い水準で推移しています。

資料:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
資料:警察庁「サイバー警察局便り Vol.6」
これは、攻撃が特定の業種や大企業に限定されることなく、サプライチェーンを構成する中小企業まで含めた、あらゆる組織を標的にしていることを示しています。特に注目すべきは、攻撃が「単なるシステム停止」から「情報漏洩」を伴う複合的な脅威へと進化している点です。
二重脅迫(ダブル・エクストーション)の常態化
近年のランサムウェア攻撃の最も大きな特徴は、「二重脅迫(ダブル・エクストーション)」が常態化していることです。

資料:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
- 脅迫 その1:システムを暗号化し、業務を停止させることで、「業務を再開したければ身代金を払え」と要求する。
- 脅迫 その2:暗号化する前に、企業の機密情報や顧客情報などのデータを盗み出し、「身代金を払わなければ、盗み出したデータをインターネット上に公開する」と脅迫する。
この二重の脅迫により、企業は「業務停止による経済的損失」と「情報漏洩による信用の失墜・法的責任」という、二つの致命的なリスクに同時に直面することになります。
ランサムウェア被害に遭うと
ランサムウェア被害に遭うと、復旧には日数も費用も想像以上にかかります。システムの暗号化解除やバックアップからの復元作業、ネットワーク全体の安全性の再確認、再発防止のためのセキュリティ強化など、多岐にわたる対応が必要になるためです。実際、警察庁の調査でも、復旧完了までに数週間から数カ月を要するケースが珍しくなく、その過程で多額のコストが発生することが報告されています。
次のグラフは、実際に報告された復旧期間と費用の傾向を示したものです。

資料:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
上記のグラフからも分かるように、「被害を受けてから対応する」姿勢では事業継続に重大な影響を与える可能性が高く、平時からの備えこそが最も効果的な対策と言えます。
3:ランサムウェア感染を防ぐ対策
ランサムウェアによる被害を防ぐには、攻撃者が狙う「侵入経路」を先回りして塞ぐことと、侵入後の異常を早期に検知し被害を最小限に抑える「多層防御」が重要です。
ここでは、企業が取り組むべき具体的な対策と、実施状況を確認するためのチェックポイントを解説します。
OSやアプリケーションのアップデートを徹底する
多くのランサムウェアは、古いOSやアプリケーションに残された「脆弱性(セキュリティホール)」を悪用して侵入します。
脆弱性は、ソフトウェアの設計上・プログラム上の欠陥であり、攻撃者にとって「いつでも侵入できる裏口」となります。
メーカーが提供する「セキュリティパッチ」を適用する(アップデートする)ことは、この裏口をふさぐ最も基本的かつ重要な防御策です。
しかし企業環境では、すべての端末に対して更新を適用することが難しく、未更新の端末が放置されるケースも少なくありません。そのため、情報システム部門などが中心となり、各端末のアップデート状況を一元的に把握し、適用漏れを防ぐ運用体制を整えることが重要です。
たとえば、更新状況を定期的に確認するルールを設けたり、未適用端末を自動的に検知する仕組みを導入したりすることで、管理の抜け漏れを防ぐことができます。
特に、外部に公開されている機器(VPN装置、ファイアウォールなど)のファームウェアや、サーバーのOSは、攻撃者が常に狙っているポイントです。これらを定期的に、そして緊急性の高いパッチが公開された際は速やかに適用することが、被害を防ぐことに直結します。
セキュリティソフト(NGAV/EDR)を活用する
従来のセキュリティソフト(アンチウイルスソフト)は、すでに知られているウイルス(既知の脅威)の「定義ファイル」を使って検知するのが主な役割でした。しかし、日々新しいランサムウェアが登場する現在、この方法だけでは限界があります。対策としては、未知の脅威を検知・防御するNGAVやEDRが有効です。
未知の脅威に対応するNGAV
NGAV(Next-Generation Antivirus:次世代アンチウイルス)は、定義ファイルに頼らず、AI(人工知能)や機械学習の技術を用いて「ファイルの振る舞い」からマルウェアかどうかを判断します。これにより、まだ誰も見たことがない未知のランサムウェアであっても、その実行を未然に防ぐことができます。
ただし、NGAVだけであらゆる攻撃を完全に防げるわけではありません。攻撃手法は日々高度化しており、すり抜けて侵入される可能性もあるため、単一の対策に依存しないことが重要です。
詳しくはこちら
侵入後の動きに対応するEDR
最も重要度が高いのがEDR(Endpoint Detection and Response)です。
EDRは、ランサムウェアの侵入を完全に防ぐことではなく、「侵入を許してしまった後」の対応に特化したソリューションです。PCやサーバー(エンドポイント)の挙動を継続的に監視し、ランサムウェアが「潜伏・偵察活動」や「横展開」を始めようとする不審な振る舞いを検知します。実行後の振る舞いを監視するのが、EDRです。また、不審な挙動を検知した際は、攻撃が広がる前に該当端末をネットワークから自動で隔離し、被害の拡大を最小限に食い止めます。EDRは導入するだけでは十分ではなく、アラートの監視や分析を継続的に行う運用体制が必要です。
たとえば、アラートが発生した際に誰が対応するのか、どのように判断するのかといったルールをあらかじめ定めておかないと、検知しても適切な対応ができない可能性があります。
NGAVが「入り口での防御」を担うのに対し、EDRは「侵入後の早期発見と封じ込め」を担う、多層防御の要となるソリューションです。このように、NGAVとEDRを組み合わせた多層防御と、それを適切に運用する体制の両方を整えることが、ランサムウェア対策において重要です。
認証強化(パスワード+MFA:多要素認証)
ランサムウェアの侵入経路として、正規のアカウント情報を悪用した不正アクセスが増加しています。IDとパスワードの情報が漏えいしたり、推測されやすい状態になっていたりすると、攻撃者は正規ユーザーとしてネットワークに侵入し、内部で自由に活動できてしまいます。このようなリスクを防ぐためには、パスワード管理の徹底と多要素認証(MFA)の導入を組み合わせた「認証強化」が不可欠です。
まず、パスワードについては、英大文字・小文字・数字・記号を組み合わせた長く複雑なものを設定し、推測されにくい状態にすることが基本です。また、業務で使用するパスワードの使い回しは厳禁であり、システムごとに異なる認証情報を設定する必要があります。
しかし、パスワードだけに依存した認証には限界があります。フィッシング攻撃や情報漏えいによって認証情報が流出した場合、それだけで不正ログインを許してしまうためです。
そこで重要となるのが、多要素認証(MFA)の活用です。
MFAでは、「パスワード(知っていること)」に加えて、「スマートフォンの認証コード(持っているもの)」など、複数の要素を組み合わせて認証を行います。これにより、万が一パスワードが漏えいした場合でも、不正ログインを防ぐことができます。
特に注意すべきなのが、VPNやリモートデスクトップ(RDP)など、外部から社内ネットワークへ接続できる経路です。これらは攻撃者にとって侵入口となりやすく、認証が突破されると内部への侵入を許してしまいます。そのため、VPN・RDP・クラウドサービスといった外部公開されているすべてのアクセス経路に対して、多要素認証を必ず適用することが重要です。
認証の強化は、比較的導入しやすい対策でありながら、ランサムウェアの侵入リスクを大きく低減できる効果的な手段です。まずは外部接続から優先的に見直し、段階的に全体へ適用していくことが推奨されます。
メール経由の感染対策
ランサムウェアの主要な侵入経路の一つが、メールを悪用した攻撃です。
取引先や社内の担当者を装った巧妙な標的型攻撃メールが増加しており、従業員が気づかずに添付ファイルやURLリンクを開いてしまうケースが多く報告されています。こうしたリスクを防ぐためには、技術的な対策と運用ルールの両面から対策を講じることが重要です。
まず、基本となるのがメールのフィルタリング機能の活用です。スパムフィルターやマルウェア検知機能を有効化することで、不審なメールを受信前の段階でブロックし、従業員のもとに届くリスクを低減できます。
しかし、すべての攻撃メールを完全に防ぐことは難しく、すり抜けてしまうケースもあります。そのため、従業員側の対応も重要になります。特に注意すべきなのが、添付ファイルとURLリンクです。不審なメールに添付されたファイルを開いたり、本文中のリンクをクリックしたりすることで、マルウェア感染やフィッシングサイトへの誘導が発生します。
そのため、「送信元が不明なメールの添付ファイルは開かない」「安易にURLリンクをクリックしない」といった基本ルールを社内で徹底することが不可欠です。たとえ知っている取引先からのメールであっても、内容に違和感がある場合は別経路で確認するなど、慎重な対応が求められます。
さらに、標的型攻撃メールは年々巧妙化しており、見た目だけで判別することが難しくなっています。そのため、定期的なセキュリティ教育や疑似攻撃訓練を実施し、従業員の判断力を高めることも重要です。
より高度な対策として、サンドボックス機能の活用も有効です。これは、添付ファイルを隔離された仮想環境で事前に実行し、不審な挙動がないかを確認する仕組みであり、未知のランサムウェアの検知にも有効です。
メール経由の感染対策では、「システムによる防御」と「人による判断」の両方を組み合わせることが重要であり、多層的な対策を講じることで感染リスクを大幅に低減できます。
最後の防衛線:バックアップ戦略の徹底
どれだけ高度なセキュリティ対策を講じても、ランサムウェアの侵入を100%防ぐことはできません。そのため、万が一感染した場合でも事業を継続できるようにする「バックアップ戦略」は、最後の防衛線として極めて重要です。
ランサムウェアによってデータが暗号化された場合でも、正常なバックアップが確保されていれば、身代金を支払うことなくシステムを復旧し、業務を再開することが可能です。一方で、バックアップが不十分だったり、同時に破壊されてしまったりすると、復旧が困難になるケースも少なくありません。
そのため、バックアップは「取得しているだけ」では不十分であり、安全に保管し、確実に復旧できる状態まで含めて設計する必要があります。
まず基本となるのが、「3-2-1ルール」の徹底です。
本番データとは別に複数のバックアップを保持し、異なる媒体に分散して保存することで、単一障害によるデータ消失リスクを回避します。
3-2-1ルール
- 3:「元データ(オリジナル)+バックアップを2つ」合計3つのコピーを保持し、1つが壊れても他が生き残る状態を作ります。
- 2:バックアップは、2つの場所・媒体に保管します。同じ媒体・同じ場所だと、故障・火災・攻撃で同時に失われる可能性があるためです。
- 1:1つはオフラインまたは、ネットワークから切り離した環境で保管します。
特に重要なのが、オフラインバックアップの確保です。バックアップデータが常にネットワークに接続されている状態では、本番データと同様にランサムウェアによって暗号化されてしまう可能性があります。そのため、バックアップ取得後はネットワークから切り離し、攻撃者がアクセスできない状態(エアギャップ)で管理することが不可欠です。
※エアギャップとは、バックアップデータをネットワークから切り離し、外部からアクセスできない状態で保管することを指します。
さらに、世代管理も重要なポイントです。バックアップを1世代のみ保持している場合、感染後のデータを上書きしてしまうと、正常な状態に戻せなくなるリスクがあります。複数世代のバックアップを保持することで、感染前の状態まで遡って復旧できる可能性が高まります。
また、見落とされがちなのが復旧テストの実施です。実際に復旧作業を行ったことがない場合、「いざという時に復元できない」「想定以上に時間がかかる」といった問題が発生することがあります。定期的に復旧手順を検証し、確実に業務を再開できる状態を維持することが重要です。
このように、バックアップ対策は「取得」「保管」「復旧」のすべてを含めて設計・運用する必要があります。単なるデータ保存ではなく、インシデント発生時に確実に機能する“復旧戦略”として整備することが、ランサムウェア対策において不可欠です。
社員へのセキュリティ教育を継続的に行う
技術的な対策が「システムの隙」を塞ぐ役割を担うのに対し、「人の隙」を塞ぐのがセキュリティ教育です。ランサムウェア攻撃の多くは、メールを通じて人の判断ミスを誘発する形で実行されるため、従業員一人ひとりの対応力が重要な防御要素となります。
まず重要なのが、継続的な知識のアップデートです。攻撃手法は日々進化しており、二重脅迫(ダブル・エクストーション)やVPNアカウントの悪用など、近年の傾向を全社員が理解しておく必要があります。
また、「不審なメールの見分け方」や「心当たりのない添付ファイルは開かない」「安易にURLリンクをクリックしない」といった基本的な行動ルールを、組織として明確に定め、周知・徹底することが不可欠です。
ここで注意すべきなのは、セキュリティ教育を年1回の研修で終わらせてしまうケースです。単発の教育では知識が定着しにくく、時間の経過とともに意識も薄れてしまいます。効果を高めるためには、定期的な教育・研修の機会を設け、継続的に意識づけを行うことが重要です。
さらに、実践的な対策として有効なのが標的型攻撃メールの訓練です。疑似的な攻撃メールを従業員に送信し、開封やクリックの傾向を可視化することで、組織の弱点を把握できます。訓練結果をもとにフィードバックを行うことで、個人および組織全体の対応力を高めることが可能です。
このように、セキュリティ教育は単なる知識提供ではなく、「継続」と「実践」を組み合わせた運用が重要です。IT部門だけでなく、経営層を含む全社員が当事者意識を持ち、組織全体で取り組むことで、ランサムウェアに対する防御力を高めることができます。
ログ監視による早期検知
ランサムウェア対策では「侵入させないこと」が重要ですが、近年の高度な攻撃を完全に防ぐことは困難です。そのため、万が一侵入された場合でも被害を最小限に抑えるために、「いち早く異常に気づく」仕組みを整えることが求められます。その中核となるのが、ログの取得と監視です。
ログの種類や具体的な活用方法については、次の記事で詳しく解説しています。
おすすめ
ランサムウェアは侵入後すぐに攻撃を開始するとは限らず、内部での偵察活動や権限昇格、他端末への横展開といった動きを経て、最終的にデータの暗号化を実行するケースが一般的です。この段階で異常を検知できれば、被害の拡大を防ぐことが可能になります。
具体的には、以下のようなログを継続的に確認することが重要です。
- ログイン履歴(不審な時間帯・拠点からのアクセス)
- 管理者権限の利用状況
- ファイル操作ログ(大量のファイル変更・削除)
- セキュリティアラートや不審なプロセスの実行履歴
たとえば、深夜に通常利用されないアカウントでのログインや、短時間で大量のファイルが変更されている場合、ランサムウェア感染の兆候である可能性があります。
ただし、これらのログを手作業で監視し続けることは現実的ではありません。特に複数の端末を運用している企業では、ログの量が膨大になり、重要な異常を見逃してしまうリスクがあります。
そのため、ログの収集・分析を自動化し、異常を検知できる仕組みを整えることが重要です。ログを一元的に管理し、インシデントの兆候を早期に把握できる体制を構築することで、ランサムウェアによる被害を最小限に抑えることができます。
おすすめ
対策をここまで紹介してきましたが、自社の状況を簡単に確認できるチェックリストを用意しました。
ランサムウェア対策チェックリスト
次の項目について、自社で対応できているか確認してみましょう。
□ セキュリティ対策ソフト(NGAVやEDRなど)を導入している
□ メール経由の攻撃に対する対策(フィルタリング・教育など)を実施している
□ 管理者権限を適切に制御している
□ VPN・リモートデスクトップ(RDP)など外部接続に多要素認証を適用している
□ ログの取得・監視により異常な挙動を把握できる状態になっている
□ バックアップが取得され、オフライン保管や世代管理が行われている
一つでも不安な項目がある場合は、対策の見直しや運用体制の改善を検討することが重要です。

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4:なぜ従来の対策では防げないのか(ゼロトラストの考え方)
従来のセキュリティ対策は、社内ネットワークと社外ネットワークの間に強固な「壁(境界)」を築く「境界型セキュリティ」が中心でした。しかし、第1章で確認した通り、VPNやリモートアクセスが普及し、攻撃者がその境界を巧妙に突破して内部に侵入する現在、この「壁」だけでは企業を守りきれません。
そこで今、ランサムウェア対策における最上位の戦略として注目されているのが、「ゼロトラスト(Zero Trust)」という考え方です。
ゼロトラストとは?
ゼロトラスト(Zero Trust)とは、直訳の通り「何も信頼しない」というセキュリティの基本原則です。

従来の境界型セキュリティとの違いは次の通り:
| 境界型セキュリティ | ゼロトラスト・セキュリティ | |
|---|---|---|
| 基本思想 | 一度境界の内側に入れば、基本的に安全と見なす。 | 社内・社外を問わず、すべての人、デバイス、接続を疑う。 |
| アクセス | アクセスポイントで認証すれば、広範囲へのアクセスが可能。 | アクセス要求の度に、認証・認可を行う。 |
| 対策の焦点 | ネットワークの「入り口」を固める。 | ネットワークの「内側」と「データそのもの」を守る。 |
仮に攻撃者が境界を突破してネットワークの内側に侵入したとしても、「ここは安全な場所ではない」という前提で防御を機能させ、被害の横展開を防ぐのがゼロトラストの本質です。ランサムウェア対策においてゼロトラストを意識することで、事例に見られるような「侵入後の潜伏や横展開」を阻止し、被害を最小限に抑えることができます。
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ランサムウェア攻撃による被害事例
ゼロトラストの概念がなぜ重要なのかは、現実に発生している攻撃の傾向から学ぶのが最も効果的です。特に、警察庁が公表している以下の事例は、いかに攻撃者が境界突破後も時間をかけて活動しているかを示しており、ゼロトラスト対策の必要性を裏付けています。
ここでは、警察庁の「令和7年における サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」のコラムを2つ紹介します。
年末年始にかけての重要インフラ事業者等に対するDDos攻撃:
令和6年12月下旬から令和7年1月上旬にかけて、交通機関や金融機関等の重要インフラ事業者等において、DDoS攻撃によるとみられる被害が相次いで発生し、空港において手荷物の自動チェックイン機が使えない障害や、インターネットバンキングにログインしづらい状況が発生するなど、実際に国民の生活に被害がもたらされた。警察においては、当該DDoS攻撃について、複数の手口を確認しており、また、攻撃に対し事業者が遮断措置を講じた場合でも、状況に応じて手口を変化させ、攻撃を継続する事例を確認している。

資料:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」を加工して作成
ボイスフィッシングによる不正送金被害:
令和6年秋から令和7年4月にかけて、犯罪グループが企業に架電し、ネットバンキングの更新手続等をかたってメールアドレスを聞き出し、フィッシングメールを送付するボイスフィッシング(ビッシング)という手口による法人口座の不正送金被害が急増した。令和7年5月から10月にかけては被害の発生がみられなかったものの、11月には不正送金被害が再び急増し、地方を拠点とした中小規模の金融機関でも多くの被害が出た。こうしたボイスフィッシングには、発信元番号が国際番号である、自動音声ガイダンスが流れた後に人間の声に切り替わる、通話中にメールアドレスを聴取されリンク付きメールが送られる、といった特徴が見られる。
そこで、ボイスフィッシングの被害を防ぐためには、銀行から電話があった場合に、営業店・代表電話に折り返して本物かどうか確認するといった対応や、インターネットバンキング利用時は、銀行公式サイト・アプリからアクセスするといった対応を徹底する必要がある。


資料:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」を加工して作成
資料:警察庁「サイバー警察局便り Vol.12」
5:ランサムウェアの被害を受けた時の対策
ランサムウェアは、初動対応の遅れによって被害が大きく拡大する傾向があります。そのため、感染が疑われた場合には、あらかじめ定められた手順に沿って迅速に対応することが重要です。ここでは、ランサムウェア感染時に実施すべき基本的な対応フローを解説します。
感染が疑われた場合の初動対応フロー
ランサムウェアはネットワーク上に拡散し、他の端末やサーバーへ次々と感染を広げる特性があります。そのため、初動対応のスピードと順序が被害規模を大きく左右します。
初動対応(被害拡大を防ぐ)
① ネットワークからの切り離し(最優先)
感染が疑われる端末は、速やかにネットワークから切り離します。
LANケーブルを抜く、Wi-Fiをオフにするなどして、他の端末への感染拡大(横展開)を防ぎます。
特に、社内ネットワークや共有フォルダーに接続されたままの状態では、被害が一気に広がる可能性があるため、迅速な対応が求められます。
② 感染端末の隔離と影響範囲の確認
感染した可能性のある端末を物理的・論理的に隔離し、影響範囲を確認します。(論理的な隔離とは、ネットワーク設定やセキュリティツールによって通信を遮断することを指します。)
同一ネットワーク内の他端末やサーバーにも異常がないかを調査し、被害の拡大状況を把握することが重要です。
ログの確認やEDRのアラートを活用することで、感染の起点や拡大状況を特定しやすくなります。
③ 電源は切らずに状況を保全
感染が疑われる場合でも、安易に電源を切らないことが重要です。メモリ上に残っている情報や実行中のプロセスは、原因調査や証拠保全に役立つ可能性があります。
また、PCの再起動も同様に避けるべきです。再起動によってメモリ上の情報や一時的な実行状態が失われ、原因特定や被害範囲の把握が困難になる可能性があります。
電源を落とすことでこれらの情報が消失してしまうため、対応方針が決まるまでは現状を維持することが推奨されます。
原因の特定と対応判断
④ 原因調査(感染経路・影響範囲の特定)
感染拡大を防止した後は、ログやセキュリティツール(EDRなど)を活用し、感染の原因や侵入経路の特定を行います。どの端末から感染が広がったのか、どの時点で侵入されたのかを把握することで、被害の全体像を明確にできます。
原因を特定せずに復旧を進めてしまうと、同様の経路から再感染するリスクがあるため、慎重な調査が重要です。
原因調査の結果は、今後のセキュリティ対策の見直しや再発防止にも重要な情報となります。
⑤ 専門機関への相談・報告
被害の状況に応じて、警察やセキュリティ専門機関への相談を早い段階で検討します。自社だけでの対応が難しい場合や判断に迷う場合は、外部の専門家の支援を受けることで、適切な対応方針を立てることができます。
警察庁「サイバー事案に関する相談窓口」
警察庁「ランサムウェア被害防止対策」
IPA(情報処理推進機構)「ランサムウェア対策特設ページ」
JPCERT/CC「侵入型ランサムウェア攻撃を受けたら読むFAQ」
参考:IPA「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」
復旧対応
⑥ バックアップを用いた復旧判断
被害状況を確認したうえで、バックアップからの復旧が可能かどうかを判断します。
正常なバックアップが存在する場合は、感染端末を初期化したうえで復元を行い、業務の再開を目指します。なお、バックアップデータ自体が感染していないかを事前に確認することが重要です。
⑦ 復号ツールの有無を確認
一部のランサムウェアについては、セキュリティ機関などが無償の復号ツールを公開している場合があります。感染したランサムウェアの種類を特定し、利用可能な復号手段がないか確認します。
資料:警察庁「ランサムウェア(Phobos/8Base)により暗号化されたファイルを復号!!」
6:SOCを活用したランサムウェア対策
ランサムウェア対策としては、自社での防御(多層防御やゼロトラスト)といった自社での対策に加え、外部の専門家を活用する方法もあります。特に、24時間365日体制での監視が求められる現代においては、自社だけで対応し続けることにはリソースの面で限界があります。
そこで有効な選択肢の一つが、SOC(Security Operation Center:セキュリティ監視センター)です。
SOC活用のメリット
SOCはセキュリティの専門家集団であり、自社のネットワークやエンドポイントを継続的に監視することで、インシデントの早期発見と対応を支援します。
| 有効な対策 | 説明 |
|---|---|
| 早期発見と封じ込め | ランサムウェアは、実行前に必ず「潜伏・偵察活動」を行います。SOCは、EDRなどのツールから送られる膨大なログを解析し、この「静かな不審な動き」を専門的な知見で即座に検知。攻撃が広がる前に端末の隔離やアクセス遮断といった初動対応を支援します。 |
| 高度な知見の活用 | SOCは常に最新のランサムウェアの手口を把握しており、自社のIT担当者だけでは見逃しがちな巧妙な攻撃のパターンを正確に識別できます。セキュリティ人材不足に悩む企業にとって、外部の高度な知見を利用できることは、大きなメリットです。 |
| 迅速な復旧支援 | 万が一被害が発生した場合も、SOCの専門家が感染経路の特定(フォレンジック)やシステムの復旧を支援することで、ダウンタイム(業務停止期間)を大幅に短縮できます。 |
すべてを任せるのではなく“組み合わせ”が重要
SOCの活用は有効な手段ですが、すべてのセキュリティ対策を外部に依存するのではなく、自社内での対策と組み合わせて運用することが重要です。
たとえば、端末のアップデート状況やユーザーの操作ログといった基本的な情報を自社で把握できていなければ、SOCからのアラートに対して適切な判断や対応が難しくなる可能性があります。日常的なセキュリティ運用は自社で可視化・管理しつつ、必要に応じてSOCの専門的な監視や分析を組み合わせることで、より実効性の高い対策を実現できます。
まとめ:ランサムウェアの脅威を「解決」するために
ランサムウェアは、企業規模を問わず発生する現実的な脅威であり、一度被害を受けると業務停止や情報漏えいなど深刻な影響を及ぼします。
そのため、OSやソフトウェアの更新、認証強化、バックアップの整備、社員教育といった基本的な対策を着実に実施することが重要です。
あわせて、感染経路を理解し、リスクの高いポイントを事前に把握しておくことで、被害の発生を未然に防ぐことができます。
より詳しく理解したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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しかし、これらの対策が自社で十分に実施・運用できているかを把握できている企業は多くありません。これらの対策を個別に運用しているだけでは、対応の抜け漏れや管理の属人化といった課題が生じやすくなります。特に複数の端末やユーザーを抱える企業では、対策状況を正確に把握し続けることは容易ではありません。
ランサムウェア対策を確実に機能させるためには、更新管理やログ監視、端末管理を含めたセキュリティ対策を一元的に把握・運用できる仕組みを整えることが重要です。
「ISM CloudOne」では、端末のアップデート状況の可視化や操作ログの取得を通じて、ランサムウェア対策に必要な運用を効率的に支援します。不審な操作や通常と異なる挙動に気づきやすくすることで、インシデントの早期発見に役立ちます。
自社の対策状況を見直し、抜け漏れのないセキュリティ体制を構築するために、まずは現状の把握から始めてみてください。

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